為替ヘッジとは、海外の株式や債権、投資信託など、本来為替リスクを含む投資商品の、為替変動リスクを取り除く投資手法です。

ヘッジ（headge）とは、『防止・回避』を意味しています。

海外の株式や債券に投資してみたいけれど、為替リスクが気になるという方には、為替ヘッジをかけた投資がおすすめです。

一方で、為替ヘッジをかけるということは、為替相場が円安になった場合に期待できる為替差益を手放すことになる点をしっかりと理解しておきましょう。

為替ヘッジは、海外の株式等に投資する際、同時に為替予約取引を行うことで、為替リスクを相殺するしくみです。

為替予約取引は、将来このレートで売ります（買います）と、あらかじめ決めて行う為替取引のことです。

具体的な例を見てみましょう。

米国株式を1万ドル買い付け、1ドル120円で為替予約取引（売り）を行った場合

※為替ヘッジをわかりやすく説明するため、米国株式の価格変動は加味していません。

①為替レートが1ドル110円のとき

　米国株式＝1万ドル×110円＝110万円（−10万円）

　為替予約（売）＝1万ドル×120円＝120万円（＋10万円）

②為替レートが1ドル130円のとき

　米国株式＝1万ドル×130円＝130万円（＋10万円）

　為替予約（売）＝1万ドル×120円＝120万円（−10万円）

投資期間中に為替レートが円高・円安どちらに動こうと、為替予約取引で前もってレートを決めているため、為替予約取引の円換算額に変動はありません。

為替ヘッジのコストは、「投資する海外通貨の短期金利」と「日本円の短期金利」との差になります。海外通貨の短期金利が、日本円の短期金利よりも高い場合、コストが発生します。したがって、高金利通貨の場合、コストが高くなる点に注意が必要です。

また、日本円の短期金利は非常に低い状態が続いているため、プレミアムが発生するケースは現時点では稀と言えるでしょう。

海外通貨の短期金利＞日本円の短期金利＝コスト（費用）

海外通貨の短期金利＜日本円の短期金利＝プレミアム（収益）

海外資産に投資する投資信託では、為替ヘッジあり・なしの選択が可能です。（※銘柄によっては、選択できないものもあります。）

為替リスクを軽減しながら、投資したいと考えている方は為替ヘッジありを選択しましょう。また、投資する海外資産の通貨がこれから円高に向かうと予想される場合も、為替ヘッジありを選択した方が良いかもしれません。

なお、長期投資では為替ヘッジコストが嵩むケースも考えられるため、短期金利の差やこれからの為替相場の動きも考慮して、為替ヘッジを掛けるかどうかを検討しましょう。

為替ヘッジをかけるメリットは、やはり為替変動リスクの軽減です。

例えば、ドル円の為替レートを確認してみると、2013年〜2023年の10年では、1ドル100円〜150円のレンジで推移しています。

投資するタイミングによっては、為替変動だけで円換算額が3分の2になる可能性もあります。

為替ヘッジは、予測が難しい為替リスクを軽減しながら、海外資産への投資を可能にする方法です。その結果、投資家は海外資産の動きに注視することができます。

為替ヘッジをかけるデメリットは、コストがかかる点が挙げられます。

必ずしも、為替ヘッジがコストになるわけではありませんが、日本円の短期金利が低い現在の金利環境では、コストとして収益を圧迫する可能性があります。

また、円安に動いた場合の為替差益が得られない点も認識しておく必要があります。

全ての投資信託ではありませんが、海外資産への投資を対象とした投資信託では、為替ヘッジのあり・なしを選択できる銘柄が多数あります。

なお、銘柄によっては、為替ヘッジありとなしをスイッチング（変更）でき、スイッチングにかかる手数料は割安もしくは無料の場合もあるため、事前に確認しておくと良いでしょう。

投資のタイミングや、今後の相場予想など総合的に判断し、為替ヘッジをうまく活用してください。